
長野駅から車で30分、なだらかな茶臼山西麓にある信里(のぶさと)地区。
棚田や果樹園、集落が広がる斜面地に、約500個のため池があります。
シナイモツゴが生息していることから、「茶臼山周辺のため池群」として環境省の「生物多様性の観点から重要度の高い湿地」(略称:重要湿地)に選定されています。
当会はシナイモツゴの保全に関心を持ち、地元団体や農家を通じてため池の管理作業を開始しました。
現在は、地区の水利組合に所属し、耕作者のいない田で米を作りながら、シナイモツゴやため池の保全に取り組んでいます。
信里に残る希少種、シナイモツゴ
長野市信里地区は、棚田と林檎園が広がる美しい里です。
ここに500個ほどある小さなため池のうちのわずかな箇所に、シナイモツゴが生息しています。
かつてはどこにでもいた普通の小魚でしたが、ため池の手入れができなくなったことや、外来種のオオクチバスやブルーギル、近縁種モツゴの侵入などによって、急激に減少し、絶滅寸前になっています。

シナイモツゴ Pseudorasbora pumila
コイ科モツゴ属
環境省レッドリスト:絶滅危惧ⅠA類
特定第二種国内希少野生動植物種(種の保存法)
長野県条例指定希少野生動植物
本州の信越以北に分布する全長7cmほどの淡水魚。
外来魚のオオクチバスやブルーギルによる捕食、近縁のモツゴ(国内外来種)との交雑、生息地の開発などが減少要因とされています。
長野県では平野部からは絶滅し、山間の一部地域のみに生息。
信里では約30個のため池(当会の活動範囲では3個)で生息が確認されていますが、ため池の放棄や管理頻度の低下により生息池が減少しています。
消えゆく、名もなきため池

信里地区では1970年の減反政策に始まり、過疎化・高齢化などによって、放棄される水田や管理できなくなったため池が増加しました。
信里地区のため池の多くは、個人や数戸で所有する小規模な池です。
土地改良区などが管理する大規模ため池と異なり、行政による支援が届きにくい実状があります。
管理の担い手がいなくなったため池は、底泥の堆積や陸化、外来魚の侵入などによって荒廃し、シナイモツゴの生息水域は減少しました。
信里地区での活動
シナイモツゴの生息するため池と水田生態系を保全するため、信里地区で荒廃している小さなため池を回復させる作業を行っています。
当会は東京都などで、市民参加によるかいぼりと水辺再生に取り組んできました。
この技術や経験を、行政の支援が届きにくい中山間地域のため池の管理に注ぎ、絶滅危惧種を保全します。


パイスケを使って池底の落ち葉や泥を取り除く(当地では「泥上げ」と言う)


(当地では「すげさらい」と言う)
2017年より、地元の活動団体「ぽんすけ育成会」や農家を通じて、信里地区でのため池の管理作業を開始しました。
現在は地区の水利組合に所属し、耕作者のいない田で米を作りながら、シナイモツゴやため池の保全に取り組んでいます。
保護回復事業の認定を受けて
当会のシナイモツゴ保護回復事業は2025年10月30日、「長野県希少野生動植物保護条例」の規定による認定(7自保第232号)を受けました。シナイモツゴの生息状況を把握し、生息環境を改善するため、以下のような活動に取り組んでいます。
主な活動
- 中山間地の小規模ため池群におけるシナイモツゴの生息状況をモニタリング
- ため池の所有者や地元の方の理解を得て、ため池のかいぼりを実施
- アメリカザリガニやウシガエルなどの外来種を駆除
- 堤体の草刈りや樹木の伐採など、ため池周辺の維持管理作業を継続して実施
