
多摩川上流から東京の東西約43kmを流れる玉川上水は、都内でも貴重な連続樹林として知られ、東京都の歴史環境保全地域にも指定されています(参考・玉川上水の歴史)。
しかし現在、上流域では外来生物のアライグマが生息し、周辺のあきる野市や日の出町へ分布が拡大しています。やがてこれらの個体が玉川上水の連続樹林を使って東部へ移動し、玉川上水の中流部に定着するかもしれません。
1.タヌキ、ハクビシン、アライグマの推定生息分布
市区町村への聞き取り内容、当会にお寄せ頂いた目撃情報に基づいて推定生息分布を作成しました。アライグマについては、過去の文献資料等や生息調査についての知見も含めて作成しています。図は東京都内・区部と多摩地区を示しています。
タヌキは49市区町村、ハクビシンは53市区町村、アライグマは35市区町村で生息が確認されました。東京都と隣接する県では既に広範囲にわたってアライグマが分布しています。今後、アライグマが隣接県から侵入するとともに、都内で増えた個体が拡大する可能性があります。
また、目撃情報がない市区町村にはその種が生息していないわけではなく、目撃情報が寄せられていない可能性が考えられます。
2.生 息 調 査
2012年2月から2013年3月にかけて、生息調査を実施しました。生息調査では、痕跡調査、アライグマ誘引式餌トラップ調査(180地点)とセンサーカメラ調査(32地点)の調査をしました。
調査区間は玉川上水中流部18kmです。餌トラップとは動物を捕獲するためのワナではなく、アライグマのように手先が器用な動物にだけ餌が取れる仕組みのワナです。
結 果
痕跡調査やセンサーカメラ調査を行なった結果、
◆哺乳類ではタヌキ、ドブネズミ、ネコ、ハクビシン、アライグマ、アナグマ等が撮影されました。
◆鳥類では、シジュウカラ、キジバト、ヤマガラ、メジロ、オシドリ、カルガモ、コサギ、ゴイサギ、アオサギ、シロハラ、ウグイス、キセキレイ、ツグミ、オナガ、ハシブトガラス等が確認されました。
◆アライグマは、小金井市、小平市(2地点)の計3地点で撮影されました。
◆餌トラップについては、アライグマが撮影された地域で消失率が高い結果が得られました。
◆痕跡調査では、タヌキ、ドブネズミ、ネコ、ハクビシン、アライグマの痕跡が確認されました。
生息調査結果から、調査地域周辺のアライグマはまだ少ない可能性があります。しかしながらアライグマは1962年に愛知県犬山市の飼育施設から脱走、野生化したことをきっかけに各地で増加し、2006年時点で全都道府県にて生息が確認されています。今後、アライグマは都内のまだ生息数が少ない地域にて増加する可能性があり、タヌキをはじめとした在来生物への影響が懸念されます。
さらに、東京都水道局によって策定された史跡玉川上水整備活用計画(2009年8月)により、動物が身を隠すことのできる樹林帯が減少しています。そのため、ねぐらや隠れ場所として住宅地などを利用することが危惧されます。農業被害のみならず、屋根裏侵入や糞尿による家屋被害などの生活被害、公衆衛生上の被害なども生じる可能性が考えられます。
![]() 当会が行なったアライグマ等の生息調査は、とうきゅう環境財団、杉並区NPO支援基金より助成をいただきました。 また、東京都環境局、水道局から玉川上水への立ち入り許可を頂きました。厚く御礼申し上げます。 |
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とうきゅう環境財団では、助成した団体の報告書をHP上で公開しています(→こちら)。 |